ウェブサイトの品質とセキュリティを左右する「画像メタデータ」とは?

ウェブサイトにアップロードしているその写真、実は見えない情報を添付しているかもしれません。写真の画像メタデータには、撮影日やカメラの機種、ときには撮影場所といった個人情報まで記録しています。
この情報は画像の管理やワークフローに役立つ一方でウェブサイトや SNS などで公開する際は重大なリスクとなり得ます。この記事では、画像メタデータとは何かという基本から、多くの利用者がいる WordPress での具体的な対策まで、ウェブサイトオーナーが知っておくべきポイントを解説します。
画像メタデータとは?
ウェブサイトにアップロードする写真。その見た目やサイズには気を配っても、写真データに隠された「メタデータ」の存在まで意識する人は少ないかもしれません。メタデータは画像本体の色や形を決めるピクセル情報とは別に様々な情報を記録したデータです。例えるなら、写真に貼られた「見えない付箋」のようなものです。
この「付箋」には、スマートフォンのカメラで撮った写真であれば、「 2025 年 8 月 18 日に iPhone 15 Pro Max で撮影、撮影場所は東京都千代田区です」といった情報が意図せずとも自動で書き込まれています。そして、この情報はウェブサイトに画像をアップロードしても、多くの場合そのまま残ってしまいます。
おもなメタデータの種類
EXIF(Exchangeable Image File Format)
- 内容:撮影日時、カメラの機種・レンズ、露出値、 GPS(位置情報)など
- 用途:写真管理ソフトが画像を自動で回転させたり、撮影日時順のカタログ化
IPTC(International Press Telecommunications Council)
- 内容:見出し、著作権者、作者名、キーワード、説明文など
- 用途:報道機関やメディアでの配信ワークフローや画像の検索性を高める
XMP(Extensible Metadata Platform)
- 内容:IPTC 相当の情報に加え、汎用的な権利情報や評価、編集履歴など
- 用途:DAM(デジタル資産管理)システムなどで画像のワークフロー全体を管理するため
ICC プロファイル(International Color Consortium)
- 内容:sRGB や Display P3 といった、色の再現に必要なカラープロファイル
- 用途:異なるデバイス間で色が正しく表示されるようにするために不可欠
なぜメタデータ対策が必要なのか?
メタデータはウェブサイトのパフォーマンスとセキュリティに直接影響します。特に以下の 3 つのリスクを理解することが重要です。
- 個人情報漏洩のリスク: EXIF の GPS 情報が残ったままの画像をアップロードすると、自宅や職場の場所が特定される危険性があります。
- セキュリティ・活動ログの露出: メタデータに含まれる撮影日時や使用機材の情報から、新製品の発表日より前に撮影されたことや企業の IT 環境に関するヒントが推測されてしまう可能性があります。
- 表示の不具合: ICC プロファイルが欠落すると、ブラウザによって色が意図しない形で表示されてしまう場合があります。また、 EXIF の Orientation 情報が削除されると、正しい向きで撮影された画像でも横向きに表示されてしまうことがあります。
現場でのベストプラクティス:何をどう扱うべきか
ウェブサイトに公開する画像は原則として「必要最低限の情報だけを残し、他は削除する」という方針で扱うのが安全です。
- 削除:GPS 、撮影日時、作者名、機材情報など、公開には不要な情報
- 保持:色の再現性のために、 ICC プロファイルは原則として保持
著作権表示はメタデータに埋め込むのではなく、画像の下にテキストで表示したり、利用規約に明記したりする方が確実です。
メタデータの削除
メタデータを削除する方法はいくつかあります。ウェブサイトの規模や運用体制に合わせて適切な方法を選びましょう。
画像編集ソフトの機能を使う
Photoshop や GIMP などの画像編集ソフトで画像を一度開いて、「 Web 用に保存」といった機能でメタデータを自動で削除されます。
手作業にはなりますが、確実にメタデータをクリアできます。
この再エンコードは手軽で確実な方法ですが、 Orientation 情報も削除されるため、ウェブブラウザは画像を回転させるための情報を受け取れず、向きが正しくないケースが発生します。この方法では、まず画面上で画像を正しい向きに表示させてから保存します。
専用ツール
より高度で柔軟な管理をしたい場合は、専用のツールを使うのが有効です。
exiftool
世界中のプロフェッショナルが利用している定番のツールです。コマンドラインで動かすため、慣れは必要ですが、画像のあらゆるメタ情報を「見える化」し、必要な情報だけをピンポイントで削除できます。たとえば、「 GPS 情報だけを消す」といった細かな指示や大量の画像をまとめて処理するような高度な管理が可能です。
オンラインのメタデータ削除ツール
専用ソフトをインストールせずに、ウェブサイト上で手軽にメタデータを削除できるツールも多数存在します。これらのサービスに画像をアップロードするだけで、メタデータが自動的に削除された画像をダウンロードできます。手軽に試せますが、機密性の高い画像はアップロードしないなど、ツールの信頼性を確認して利用しましょう。
WordPress での具体的な対策
WordPress はデフォルトで EXIF や IPTC 情報を保持したまま画像を保存します。とくにユーザー投稿が可能な場合、その画像にも注意が必要です。
画像最適化プラグインを活用する
Smush や EWWW Image Optimizer といった画像最適化プラグインは WordPress のメディアライブラリを経由してアップロードされるすべての画像に対して、メタデータを削除する機能が搭載されています。
通常のブログ投稿や固定ページで使用する画像はこの機能によって安全に保護されます。
ユーザー投稿画像への注意
WooCommerce などの商品レビューやコメント欄にユーザーが画像をアップロードできる機能はサードパーティ製のプラグインによって追加されることがほとんどです。この機能はエンゲージメントを高めますが、同時にユーザー自身の個人情報が意図せず公開されるリスクをはらんでいます。
サイト管理者は以下の対策を講じる責任があります。
プラグインの仕様を確認する
ユーザー投稿用の画像が WordPress のメディアライブラリに保存される仕様であれば、画像最適化プラグインがメタデータを自動で削除してくれる可能性があります。
しかし、プラグインによってはメディアライブラリを介さず、独自のフォルダに画像を保存する場合があります。この場合は画像最適化プラグインの保護は及ばないため、投稿画像を管理するプラグイン自体にメタデータ削除機能が備わっているか、別途確認・処理を行う必要があります。
利用規約での明示
対策を講じた上で画像を投稿するユーザー向けに「投稿された画像はプライバシー保護のため、位置情報などのメタデータが自動的に削除されます」といった旨を明記した利用規約や注意書きを表示しましょう。これにより、ユーザーは安心して画像を投稿できます。
画像メタデータはウェブサイトの見た目だけでなく、その安全性と信頼性を左右する重要な要素です。画像アップロード時の設定を一度見直すだけで潜在的なリスクを排除し、より安全で快適なウェブサイトを構築できます。